診療科目
呼吸器疾患
呼吸器とは大きく分けて鼻、のど、気管、肺からなる呼吸に関わる器官のことです。
生命活動を維持するために欠かせない呼吸器は、体内への酸素供給と二酸化炭素の排出という重要な働きを担っています。
呼吸器疾患とは、鼻から肺に至るまでの呼吸に関わる器官に様々な形で異常が生じる病気の総称です。日常的な風邪から気管支喘息、肺気腫、深刻な肺炎や肺がんまで多様な状態を含みます。早期の対応と適切な医療処置が回復への近道となりますので、異変を感じたらご来院ください。
症状の一例
- 咳
- 痰
- 呼吸困難(息切れ)
- 喘鳴(ぜいめい)
- 胸痛
- 発熱
- チアノーゼ
- 嗄声(させい)
代表的な呼吸器疾患
気管支喘息・咳喘息
気管支喘息は、気道における持続的な炎症によって気道が狭くなる疾患です。「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という特徴的な喘鳴を伴う呼吸困難が主要な症状として現れます。
喘息患者さんは、室内の埃やペットの毛、季節性の花粉、タバコの煙、強い香料、冷気などがきっかけとなって症状が悪化することがあります。
咳喘息は、喘鳴や息切れは目立たず、主として咳が持続する状態です。夜間や早朝に悪化することが多く、気管支喘息の一種と考えられています。
いずれも内服薬、吸入薬を使用することで気道が狭くならないようにして、日常生活の質を保ちつことを目指します。定期的な診察と薬の適切な使用が大切です。
気管支炎
気管支炎は肺へと続く空気の通路である気管支に炎症が発生する疾患です。
急性気管支炎は、ウイルスや細菌の感染により発症します。強い咳や痰の症状、時に発熱を伴います。適切な治療により、通常1〜2週間程度で軽快します。
慢性気管支炎は、長期間(通常1年以上)にわたり咳や痰が続く状態です。主な原因は喫煙や環境汚染物質などの継続的な刺激によるもので、しばしば後述するCOPDへと進展します。
対処法は原因や症状に合わせて行われ、症状緩和のための薬や、原因が細菌感染の場合には抗生物質の投与が標準的です。慢性的な場合は特に禁煙が重要です。
肺炎
肺炎は気管支のさらに先にある肺胞という部位に炎症が発生する疾患です。細菌、ウイルス、真菌などの病原微生物による感染が主な原因となります。高齢者では誤嚥 (ムセ)が原因となることがあります。
代表的な症状には咳、痰、発熱、呼吸困難感などがあります。高齢者では典型的な症状が見られず、意識状態の変化や食欲低下が主な症状となることもあります。
肺炎は適切な治療を受けないと重篤化する可能性があり、とくに高齢者や基礎疾患を持つ方は注意が必要です。
治療は原因となる病原体に応じた抗菌薬などを使用します。重症例では入院による酸素療法や輸液などの治療が必要となることもあります。
肺炎球菌ワクチンによる予防も重要ですので、予防接種についてもご相談ください。
自然気胸
自然気胸は、明確な原因なく肺に小さな破れが生じ、胸腔内に空気が漏れ出る状態です。肺が部分的に虚脱するため、呼吸機能が低下します。
主要な症状として、突然の胸部痛、息苦しさ、乾いた咳などがあります。痛みは鋭く、呼吸を深くしたり体を動かしたりすると増強することが特徴です。
自然気胸は若年の痩せ型男性に多く発症し、喫煙者ではリスクが上昇します。一度経験すると再発することもあるため注意が必要です。
対応方法は、気胸の程度によって異なります。軽症例では経過観察もありますが、多くの場合、胸腔ドレーンというチューブを胸に挿入して、空気を排出する処置が必要となります。繰り返し再発する場合は手術を検討することもあります。
慢性閉塞性肺疾患 (COPD)
慢性閉塞性肺疾患 (COPD)は、タバコなどの有害物質への長期曝露により、呼吸機能が徐々に低下していく疾患です。有害物質が長期にわたって肺を刺激すると、細い気管支に炎症を起こし(細気管支炎)、咳や痰などの粘性分泌物が多くなります。
主な症状として、徐々に悪化する息切れ、持続する咳や痰などがあります。初期は労作時(動いたとき)のみに息切れを感じますが、進行すると日常的な活動でも呼吸困難が生じるようになります。
慢性閉塞性肺疾患では一度傷ついた肺機能を完全に回復させることは困難なため、早期発見と進行抑制のための治療が重要です。
治療の基本は禁煙です。それに加え気管支拡張薬などによる薬物療法、呼吸リハビリテーション、重症例では在宅酸素療法などが行われます。
予防において最も効果的なのは禁煙です。喫煙習慣がある方は、健康維持のために禁煙をご検討ください。
肺がん
肺がんは肺に発生する悪性新生物で、日本におけるがん死亡原因の上位を占める深刻な疾患です。
初期段階ではほとんど自覚症状が現れません。進行してから咳、血痰、胸部痛、呼吸困難などの症状が出現することがあります。
肺がん発症の最大リスク因子は喫煙です。喫煙者は非喫煙者と比較して肺がん発症リスクが顕著に高まります。その他、受動喫煙、大気汚染、職業的な有害物質への曝露なども危険因子となります。
早期発見のため、特に喫煙者や元喫煙者、肺がんの家族歴がある方などには定期的な検診をお勧めします。
治療は、がんの種類、進行程度、患者様の全身状態などを考慮して、外科的切除、放射線治療、化学療法、分子標的治療、免疫療法などを単独または組み合わせて実施します。
慢性咳嗽
咳嗽 (咳)は持続期間によって以下の3種類に分類されます。
・急性咳嗽:3週間以内におさまる咳
・遷延性咳嗽:3~8週間続く咳
・慢性咳嗽:8週間以上続く咳
そして、遷延性咳嗽、慢性咳嗽のような「長引く咳」には以下のように様々な原因があります。
長引く咳の主な原因
・感染後咳嗽:風邪やインフルエンザなどの感染症が治った後も、咳だけが続く状態です。ウイルス感染により気道が過敏になり、ちょっとした刺激でも咳が出やすくなります。
・アトピー咳嗽:アレルギー体質の方に見られる、乾いた咳が続く疾患です。喉のかゆみや、いがいが・ひりひりした症状を伴います。
・気管支喘息・咳喘息: 気管支喘息は気道の慢性的な炎症により、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という喘鳴を伴う状態です。一方、咳喘息は喘鳴が目立たず、主に咳が続く状態です。どちらも気道の過敏性が高まっており、冷たい空気や運動、アレルゲンなどがきっかけで症状が出ます。早朝や夜間に症状が強いことも特徴です。
・結核、非結核性抗酸菌症:結核菌や非結核性抗酸菌による感染症です。咳、血が混じった痰(血痰)、微熱、体重減少などが数週間から数ヶ月続きます。特に高齢者では症状がはっきりしないこともあります。診断には喀痰検査や画像検査が必要です。
・慢性閉塞性肺疾患 (COPD):主に長期喫煙により、肺の気道や肺胞が徐々に破壊される病気です。朝に痰を伴う咳が出ることが多く、次第に息切れも現れます。
・間質性肺炎:肺の間質(肺胞の周りの組織)に炎症や線維化が起こる病気の総称です。乾いた咳と、徐々に進行する息切れが特徴です。原因は様々で、薬剤性や膠原病に伴うものなど多くの種類があります。
・副鼻腔気管支症候群:鼻水、鼻づまりなどの鼻症状を伴う咳が起こります。副鼻腔からのどに分泌物が流れ落ちる状態(後鼻漏)が原因で起こります。
・肺がん:肺がんでも咳が長期間続くことがあります。特に血痰、胸の痛み、体重減少、全身のだるさなどを伴う場合は注意が必要です。
・心因性咳嗽:身体的な異常がないにもかかわらず、精神的なストレスなどが関係して生じる咳です。会話中や人前でのみ咳が出る、睡眠中には咳が止まるといった特徴があります。
・逆流性食道炎:胃酸が食道へ逆流して、気道を刺激することで咳を引き起こします。胸やけや酸っぱい液体が喉まで上がってくる感覚を伴うことがあります。食後や横になった時に症状が悪化することが多いです。
・薬剤性咳嗽:一部の薬剤によって引き起こされる咳です。特にACE阻害薬が原因となることがあり、薬剤の中止・変更で改善する場合があります。
など
まずは問診(随伴症状、咳がでる時間帯、誘発因子など)、身体診察を行い、必要時には採血、レントゲン、CT検査(外注)、喀痰検査などで詳しく調べ、原因を絞り込みます。
咳止めだけでは改善しない場合もあるため、根本的な原因に対して治療することも大切です。
必要に応じて、耳鼻咽喉科や高次医療機関と連携することで最適な治療方法をご提案します。 長引く咳は生活の質を大きく低下させるだけでなく、肺がんなどの重篤な病気が隠れていたり、ときに肋骨骨折や尿失禁などを引き起こすことがあります。特に8週間以上続く咳がある場合は、自己判断せずに医療機関への受診をお勧めします。
呼吸に関わる症状は、見逃されやすく、つい放置しがちですが、進行してからでは治療が難しくなる病気もあります。
少しでも「おかしいな」「治りが遅いな」と感じたときは、我慢せずご相談ください。
やたがいクリニックでは、ひとつひとつの症状に丁寧に向き合い、的確な治療をご提案いたします。
健康な呼吸を取り戻すために、まずはお気軽にご来院ください。